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2013年5月25日土曜日

5.19損賠説明会を実現した力は行動へつながっていくか?!


★5月19日、泉玉露応急仮設住宅で損害賠償に関する説明会が開催されました。

仮設住宅の集会場には住民が詰めかけて満員。およそ80人くらいだったでしょうか。
住民の前には東京電力、経済産業省資源エネルギー庁の年若いお役人(もちろん損害賠償担当部署)、富岡町の役場職員と、ずらりと揃いました。
連絡を受けた旅団長は、使用するハンドマイクを手配して、急遽駆けつけたのでした。

この説明会は、泉玉露応急仮設住宅で続けられている「損害賠償勉強会」のHさんたちが、財物(宅地、家屋など)について算定額を出す基準(係数)がいつの間にか変わっていることを発見し、「なに、俺達の知らない所で決めてるのかぁ? 説明に来い!」というところから始まったもののようです。




その点について、細かいことを説明しようとしても、ほとんど理解ができないと思うので、ごく簡単に書きます。

1.多くの人にとって、もっとも大きな金額になるに違いない宅地や家屋・建造物について、固定資産税や平均新築単価をもとにした
評価額(賠償額)が、算定するときの係数(経年によって価値減少するようになっている)を以前のもの(昨年7月提示、9月に説明)より高くしてあり、少し高い金額がでるようになっている。
建物係数が、あらたな建築物係数、構造物係数・庭木係数となり、従来より少し高い評価になるようにしてある。新聞報道などでは、約20%高くなるように設定し直されたとなっています。
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/03/post_6774.html
2,双葉郡の中でも、「寒冷地」とされる町村の係数が他の町村より高く設定された、というものです。

泉玉露の住民勉強会のHさんより話を電話で聞いた時、私は
「は~ん、色をつけるってことですか。でも、それで賠償されたからといって、生活再建にはまるで意味をなさないってことは変わらないでしょう。基準が変わるって、それ自体はたいした話ではなさそうですね。やっぱり、『これじゃ暮らしがなりたたないじゃないか!』というところで大枠の話をしなければダメなんじゃないですか?」

Hさんも
「んだ。分かってる。そのとおりなんだがよ、まず、いま言う賠償もえらい差が人によってでるんだ。不公平なんだよ。こういうとこも突っついて突っついて、この賠償の谷間に落っこちて、どうにもこうにもならん人たちを何とかしろって、迫るつもりだよ。みっちりやるつもりだべよ」。


いわば私たちが持ち込んだ「賠償問題勉強会」は、こうして、自分たちで考えて、粘り強くやろうとしている人たちを生み出したことがいちばんの成果かもしれません。


★午前の大人数の「説明会」

満員の説明会は、あまり気色のよろしからぬ東電・経産省の「おわび」の言葉が枕にかならずくっついた、財物賠償請求のやり方と、新基準の説明でした。

住民数人が自分の問題に引き寄せて、質問及び質問にかこつけた提案がありました。
未登記問題、係数の問題点、あるいは消費税の減免(被災者が新しい土地や宅地を求めるときにその負担が実際的な問題になる)など、さまざま出されました。
中には、固定資産税として支払ってきた税金を遡って減免しろという主張もなされました。





その回答と説明を聞いていると、東電と経産省の関係もどことなく微妙です。かならずといっていいほど東電を補足するように、経産省(資源エネルギ-庁)の説明が行われました。
東電はひたすら低姿勢を装い、経産省は賠償基準は「住民に有利になるように(つまり色を付けた)、努力した(東電に認めさせた)」と、言いたがっている感じがいたします。
怒号もなく冷静な質問と回答です。

こんなふうでいいのだろうか……、と思って私は聞いておりました。怒号が必要だというのではありません。東電・国の「現価値」の賠償ですまそうとする土俵にそのまま乗っていていいのか、という恐れです。





やはり、それだけでは終わりませんでした。
Hさんは、紛争審査会が調査に来て聴きとっていった内容(書類)をすべての省庁の担当者が読めるようにシステムをつくれ、と要求しました。被災民の声をちゃんと聞け、という提案です。
「この件がどうなったのか、俺は電話かけまくるかんね? 見たか読んだかって、どの部署にも確かめるよ」
どのような問題が発生しているのか、ここを詳細に知り整理することからしか、具体的な解決はできないだろう、と彼は主張したのです。

もうひとつ、
東電と国との関係以上に、富岡町の担当者の様子が興味深いものでした。
いよいよ、「これでは生活が成り立たないじゃないか?」という話になった時に「(国・東電がいる)この場では言いづらいことなのだが」と限定詞をつけて、やや口ごもりつつも、
「これまで町もさまざま国にも言い、働きかけてきた。賠償も再取得価格ということを考えている」と回答したのです。




あら、と思いました。その立場に立つなら、私たちが講師を派遣しての学習会で結論とした「公共用地買い上げレベル」と、考え方ではそれほど遠くない。でしゃばりでも、私は決め打ちをしなきゃいけないと思いました。
「いま、大事なことを聞いたように思うので、確認させて下さい。町は、再取得補償を要求するのですか? 町民が安心して住める住宅を手に入れられるようにしていくということですね

「これは前から言ってきています。ほかにも公共用地取得やら、とにかくいろんなことを考え、やってきてはいるのです…」
「いいぞ、町、がんばれ!」
やや明るい空気が弾けました。こんな言葉がカラ手形、口約束にすまされるとしたら、町の責任だけでなく住民自身に問題があると思い切った時だけ、本当の道は切り開かれていくでしょう。




午後の少数シビアな「懇談会」

Hさんは、国や町の担当者をただでは帰しませんでした。午後からも希望者(少数者)で、3時間以上も円卓会議をやりました。
わたしも招かれざる客かもしれないけれど、参加いたしました。
東電はお帰りになられ、経産省(資源エネルギー庁)と、町の担当者が残って話し合いました。



泉玉露賠償問題勉強会は、午前中の話を元に、もっとリアルな話を積み上げて、国と町に迫ったのです。
国は「賠償はその時点の財産価値を贖うもの」という立場を1ミリも譲る気配のないものでした。
「客観的に同じ価格で(=損壊された価値)買える額と考えています」と、言葉は丁寧だけれども、ここはけっしてゆるがせにしないという強固な姿勢です。

一方で、「買えるわけがねぇだろ」の認識には根拠があります。
それも話で出たのですが、それよりも
「生活が成り立たないんだ。この谷間に落っこちる人たちをどうやって救済するんだ」の声には、
「賠償とは別に方策をとらなければいけないし、財物賠償がすんでも、何らかの形で続くと思う」というくらいまでは、国のお役人も言わざるをえなくなっているのです。

町の担当者は
「賠償だけでなんとかなるわけがない。東電は賠償を最高のレベルと考えているようだが、町の認識はそれは最低線のもの。町民の暮らしが成り立つように、国には『考え方を変えて下さい』と言っているところだ」というのです。



仮設住宅での「説明会」は初めてのことだそうです。
泉玉露自治会は先頭に位置したことになります。これから、この動きが広がりをみせていくことでしょう。
請願行動といったものとは違う、直接行動・要求の芽生えが見え始めている気がします。
損害賠償のレベルのひどさが、町の姿勢を変え、住民の動きも駆り立てていっているように思えます。

ここらあたりの動きに参考になりそうな記事がJANJANに載っているので、URLを貼り付けておきます。
富岡町遠藤町長の発言が興味深いのです。
http://www.janjanblog.com/archives/96187