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2014年6月3日火曜日

5.31 原発問題肉薄ツァー


★横浜の「寿」のみなさんと「原発問題肉薄ツァー」

「肉薄ツァー」という名はもちろんウシトラ旅団からの呼び名です。
ちゃんとまじめに「フィールドワーク」や「スタディツァー」と呼んで浜通りの現状を見に行く人々との共同行動です。
今回は、神奈川県の寿町で暮らす日雇労働者や、炊き出しなどの支援をしておられる人たちと、被ばく労働を考えるネットワーク、そして私たちウシトラ旅団三者での現地視察ツァーでした。
実態をいえば、ウシトラはコーディネートする程度の話なのですが、寿の方々は事前に勉強会をやっての参加。
いい加減な「やっちまうか気質」のウシトラ旅団は、実は彼らの爪の垢でも煎じて飲まねばなりません。

現地に向かう車中で活動報告集を見せていただきながら、代表格のKさんに話を伺うと、寿に集まってきている労働組合や宗教者など支援者たちの多様さと、取り組みの自由さに感心と共感を覚えました。
中学生から大学生まで、勉強を兼ねて参加している子たちの感想がまたすばらしい。
「くさい、こわい、と思っていたけど、みんなやさしく接してくれて、寿にまた来たい」という感じなのです。
こういう広がりをつくってきた寿の人たちにこれから教えを請わなければならないと、けっこう愉快な気分で話をしていました。

★木幡ますみさんのガイドで
大熊町から避難して会津若松の仮設住宅に住んでいる木幡ますみさんは、最近、全国あちこちに出没して忙しくしています。
そのマスミンに無理にお願いして、富岡町・大熊町を案内してもらうことにしました。
常磐自動車道の四ッ倉PAで合流、自分たちで車を用意するからと参加してこられた劇団の「野戦の月」のみなさんともここからご一緒しました。
マイクロバスの30人にそんなこんなで人が増え、今度も最終的には40人を超える視察と交流会になりました。
木幡さんは「大熊町には帰れない。新天地での生活再建を!」と、真っ先に言い始めた人でした。
それが正しいのかどうか、私の立場では置いておきますが、女性の中からこういう訴えが出てくることの重要性を感じます。


新天地での生活再建のための要求と、「被爆者手帳」と彼女が呼ぶ健康を守っていこうとする取り組みの重要さです。
男どものだらしなさをときに笑い物にしながら、大熊町の現状をガイドしてくれたマスミンでした。


★公民館でお勉強

・除染労働者の問題
四ッ倉公民館で昼食をとり、お願いしてあった除染労働者(いわき自由労組)の話を聞き、そのあと、ゆっくりと木幡さんに話をしてもらいました。
参加者は、いわゆる重層的下請け構造というやつの実態に、さすがに驚くようです。

世間の常識外のことが、いま、とりわけ原発事故後にはまかり通るようになっています。
雇用関係のごまかし、賃金契約の詐欺的な後だしじゃんけんの設定。
簡単にいえばこういうことです。

何次にもわたる下請けでも、形式上、上の会社が雇っているように装う。一日13000円の契約で来たはずなのに、環境省から危険手当10000円が支払われるようになると、「福島県の最低賃金の6000円程度に危険手当10000円がついて1万6000円。そこから宿泊代や食費が引かれてしまう、はなはだしいのは宿泊地から現場までの交通費を差し引く」なんて例が頻出するようです。
この例でいえば、2万3000円が支払われて当然のはずなのですが、いまや1万6000円程度が標準になっているのだそうです。
声を上げれば、雇う業者ごとまるごと切って捨てられる。そんな理不尽な恐怖の中で、彼らは除染作業を続けているのです。
被ばくをなるだけ避ける装備や、環境も守られていない。これから暑い夏がやってくるのに、ほんとどうなっていくのでしょうか。

なんとか彼らの待遇を守ろうとしているいわき自由労組の訴えでした。



・浜通りの避難者の問題
木幡さんは現在の避難者の様子に語りました。
自殺者が出ていること、仮設住宅では生活が限界に達していること。
中間貯蔵施設建設にからむ諸問題。
「どういう支援が必要か?」という質問には、「忘れないこと。つながること、仮設にお茶でも飲みに来て」と語ります。
確かに何かをやるにしても、そこからしか始らないのです。

行けば、やることがきっと見つかるのだから、裃脱いで、まず交流したらと私も思います。

いわき自由労組書記長の桂さんからはどきりとする報告がありました。
「震災直後がれきを片付ける仕事を請け負っていた一家が、甲状腺がんを発症している」というものでした。
原発事故の直後にプルームは一度、いわき方面に流れています(いわゆる「消えた初期被ばく問題」)、そのときに屋外で数日間にわたって作業を続けていた人がいるのです。
この問題は、慎重にしっかりと調査しておかなければならないと思います。

ウシトラ旅団は、独自に課題を見つけて、新しい行動に取り組んでいますが、心ある人たちと、その課題を見つけ出しに行く「原発問題肉薄ツァー」をこれからも続けるつもりです。
また、少人数でじっくり見、語ってもらうスタディーツァーも始めています。
どうぞ、いらしてください。


最後にお願い。
富岡に入ってくる人たちの中には無防備に「観光」に来ている人がいるようです。
中部地方からのバスと聞きましたが、若いお母さんが赤ちゃんを抱いて現れたという話を聞きました。
確かに空間線量は下がってきていますが、そのような行為はけっしてやってはならないと思います。どんな間違いが起こらないとも限りません。
どうかどうか、目に見えぬ放射能を侮らないでください。